モータ電流監視を利用したウェハー張り付き検知機能
ウェハー搬送では、テーブルから持ち上げる一瞬に「張り付き」が起こることがあります。
追加のセンサを付けずに、モータ電流の変化だけでこの異常を見つけられたら——。本コラムでは、リフター機構の動きと、モータ電流監視による張り付き検知のしくみを、図とともに解説します。
リフターの構造(テーブル固定・3ピン昇降)
テーブルは固定されており、3本のリフターピンだけが同期して上下します。各ピンはDDモーターと送りねじによる昇降機構で、テーブルを突き抜けて上昇し、ウェハーを持ち上げます。
正常時と異常時で、何が変わるのか
テーブルは固定されたまま、3本のピンが伸びてテーブルを突き抜け、ウェハーを持ち上げます。正常時は①下降位置→②上昇中→③上昇完了とウェハーが持ち上がりますが、異常時はウェハーが離れず、ピンが押し続けて過大な負荷がかかります。
この「持ち上がらないのにピンが押し続ける」状態こそが異常のサインです。ピンに余分な力がかかるぶん、駆動するモータの電流が増えます。
なぜ「モータ電流」でわかるのか
張り付きが起きると、ピンはウェハーを押し続け、モータには余分な負荷がかかります。負荷が増えればモータ電流も増える——この関係を利用して、追加センサなしで異常を捉えます。各ピンのモータ電流をリアルタイムで監視します。
EWMA による電流のノイズ除去
ただし、モータ電流には回転中の細かな変動(スパイクノイズ)が常に乗っています。生の電流値をそのまま閾値と比べると、一瞬のノイズで誤検知してしまいます。そこで採用しているのが 指数移動平均(EWMA:Exponentially Weighted Moving Average) です。
過去の履歴の保持
| 記号 | 意味 |
| EWMAn | 今回得られる平滑化後の電流値。異常判定の対象となる出力値。 |
| In | 今回リアルタイムで取得した生のモータ電流値(測定値)。 |
| EWMAn−1 | 前回計算された平滑化後の値。過去のトレンドを保持する。 |
| α | 平滑化係数。0〜1 の値をとり、応答性とノイズ耐性を決める。 |
最新値と過去の履歴を一定の比率で混ぜ続けることで、瞬間的なスパイクを抑えつつ、張り付きによる持続的な負荷増加だけを安定して捉えられます。
係数 α による特性の変化
α を大きく(1に近い)
最新の測定値 In の影響が強い。応答は速いが、ノイズも拾いやすい。
α を小さく(0に近い)
過去の平均の影響が強い。波形は滑らかだが、急な変化への追従はわずかに遅れる。
張り付き検知の処理フロー
EWMAで平滑化した値が設定した閾値を超えたときだけ、張り付きと判定して全軸を安全に停止します。一瞬のノイズでは止まらないため、誤停止を防ぎながら、真の異常だけを確実に捉えられます。
検知できる異常と、本機能のメリット
検知できる異常の例
- ウェハーの張り付き
- ウェハーの噛み込み
- リフターピンの機械的引っ掛かり
- 異常摩擦の発生
- ピンの固着や動作不良 など
本機能のメリット
- 追加センサ不要でシンプルな構成
- ウェハー破損リスクを低減
- 搬送異常を早期に検知
- 装置の安全性・信頼性が向上
まとめ
テーブルは固定され、3本のリフターピンがテーブルを突き抜けて上昇し、ウェハーを持ち上げます。ウェハーが張り付いていると持ち上がらず、ピンに過大な負荷がかかり、モータ電流が上昇します。
その電流をEWMAで平滑化して監視することで、ノイズによる誤停止を避けつつ、ウェハーの張り付きや搬送異常を確実に検知し、安全で信頼性の高い搬送を実現します。
